はじめに
相続や将来の備えについて調べていると、「家族信託」や「遺言書」という言葉を目にすることがあります。
どちらも「大切な財産をどう遺すか、どう管理するか」に関わる制度ですが、
目的や使い方には大きな違いがあります。
今日は、家族信託と遺言の違いをやさしく整理しながら、どちらが自分に合っているのかを考えるヒントをお届けします。
遺言とは
遺言は、「自分が亡くなった後に、財産をどう分けるか」を伝えるための書面です。
- 財産の分け方(誰に何を遺すか)を決めておける
- 亡くなったあとの相続手続きを円滑に進める手助けになる
- 公正証書遺言なら確実性が高く、家族の負担も軽減できる
ただし、効力が生じるのは亡くなった後なので、生前の財産管理には使えません。
家族信託とは
一方、家族信託は、自分が元気なうちに、信頼できる家族に財産管理を託す仕組みです。
- 判断力が衰える前に、財産の管理や活用方法を指定できる
- 認知症などで意思表示が難しくなったあとでも、事前の契約内容に沿って管理してもらえる
- 不動産・預貯金などを対象に「管理の道筋」を決めておける
つまり、**家族信託は「生前から活用できる財産管理の方法」**という点が遺言とは大きく違います。
どちらを選べばいい?
それぞれの特徴を比べてみましょう:
項目 | 遺言 | 家族信託 |
---|---|---|
効力が発生する時期 | 死後 | 生前(契約時から) |
主な目的 | 財産の「分け方」の指定 | 財産の「管理」の委託 |
利用に必要な手続き | 書面(公正証書等) | 信託契約、公正証書、登記など |
認知症への備え | 原則対応不可 | 判断力低下後の備えとして有効 |
家族との関係性 | 一方的な指定が多い | 管理者(受託者)と連携が必要 |
自分が「いつから、どのように、誰に任せたいか」によって、
どちらが適しているかが変わってきます。
また、両方を組み合わせて使うケースも増えてきています。
まとめ
「遺す」と「託す」、そのどちらも家族を思えばこその備えです。
遺言と家族信託、それぞれの特徴を理解しながら、
自分と家族にとって一番いい形を選んでいくことが大切です。
私も、今後行政書士として活動を始める中で、
それぞれのご家庭に合った備え方を一緒に考え、お手伝いできるよう準備を進めています。
次回は、「成年後見人が必要になるとき」について、具体的な事例をもとにご紹介します。
ご家族の将来に備えるための制度を一緒に確認していきましょう。
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